

2025年12月20日より
新宿K's cinema 他全国順次公開予定


少女はなぜ、
裁かれなければならなかったのか


Introduction
イントロダクション
『アンデス、ふたりぼっち』オスカル・カタコラ監督、
渾身の遺言



アンデスの生命と死の神秘的な幻想を
深遠なモノクロで描く衝撃作
監督のオスカル・カタコラは、長編デビュー作となった前作『アンデス、ふたりぼっち』がアカデミー賞国際映画賞ペルー代表作品に選出されるなど国内外で高く評価され、将来を期待されていたが、長編2作目として制作に挑んだ本作撮影中に病魔に倒れ、突然亡くなってしまう。その意志を引き継いだのは、長年コンビを組み、自身もアイマラコミュニティの信仰を丁寧に描いた長編ドキュメンタリー映画『アルパカと生きる喜び』で高い評価得ていた叔父のティト・カタコラであった。そして、標高4,000メートル近い過酷な撮影環境を乗り越え、執念で完成させた。
主人公の少女ヤナワラを演じたルス・ディアナ・ママニは、撮影地でスカウトされ、主役に抜擢。今作が初めての演技となる。また、2024年の国際ガールズ・デーにおいてユネスコと協力し、困難な障害に立ち向かっている少女たちへメッセージを送っている。

Story
物語
1980年代のペルー・アンデス山脈―少女を待ち受ける、終わりなき過酷な定め
悪しき精霊に囚われた少女の物語
80歳のエバリスト(セシリオ・キスぺ)は、13歳の孫娘・ヤナワラ(ルス・ディアナ・ママニ)の殺害容疑で、共同体の裁判所に告発され尋問を受けていた。
審問が進むにつれ、ヤナワラに起こった悲劇的な物語が明らかになっていく。
<夜明けに輝く星>という意味のヤナワラと名付けられた少女は、早くに両親を亡くし祖父に育てられた。
共同体唯一の小さな学校に通い始めるが、教師から受けた性的暴力によってさらなる悲劇が重なっていく。
アンデスの禁断の地に棲む悪しき精霊に魂を囚われ、村では“穢れた”ものとして排斥されていくヤナワラ。
祖父のエバリストは愛する孫娘を痛ましく恐ろしい運命から救いたい一心で、共同体全体に影響を与える究極の決断を下すのだった。
Directors
監督プロフィール
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ティト・カタコラ
Tito Catacora
1974年生まれ。プーノにある国立大学で教育学士号と異文化教育修士号を取得後、教育学博士課程を修了。2007年に制作会社Cine Aymara Studios と共に、映画制作を始め、フィクション、ドキュメンタリー、実験映画などさまざまなジャンルの映画制作に携わる。2019年、甥のオスカル・カタコラ監督の『アンデス、ふたりぼっち』ではプロデューサーを務めた。2021年、長編ドキュメンタリー映画『アルパカと生きる喜び』(原題:Pakucha/ペルー映画祭vol.2上映作品)を制作。監督最新作に、長編歴史ドラマ『Los Indomables』がある。ペルー南部を拠点に映画制作を続けている。
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オスカル・カタコラ
Oscar Catacora
(1987年8月18日~2021年11月26日)
1987年生まれ。ペルー南部、プーノ出身。プーノにある国立大学の芸術学科で演技を学び、コミュニケーション学学士を取得。独学で映画制作を学び、17歳の時に、自身初の短編実験映画『Imperdonables』を制作。Cine Aymara Studios に入社後、数々の長編映画製作に携わるなど、映画制作者としてのキャリアをスタートさせた。2007年には、監督・主演作中編映画『El Sendero del Cholo』(45分・ビデオ)を初製作。2017年、ゴヤ賞とアカデミー賞でペルー代表に選出されたデビュー作『アンデス、ふたりぼっち』を発表。2021年、本作を撮影中に死去。34歳だった。叔父のティト・カタコラ監督の最新作『Los Indomables』では脚本を務める。
Trailer
予告編
Comments
コメント
アンデスの山奥、限界集落で少女が巻き込まれた事件。
どこにでも起こりうる普遍的な話なのですが、くっきりとした白黒で撮影した原始的な風景とそこで質素に暮らす人々のドラマから、見終わった後も静かな衝撃が残ります。
ピーター・バラカン
(ブロードキャスター)
結末はわかりきっているのに、画面から目が離せないのはなぜ?
それは、そんじょそこらのホラー映画より怖い、から。
地球の裏側の、遠い世界のことだと片付けることができない恐怖。
社会的弱者、性暴力、トラウマ、そしてマチスモ=家父長制は、日本のあなたのすぐ隣にも存在する。
言葉を喪った13歳、孫娘は、健気(けなげ)だ。だからこそ、壮絶さはいっそう強度を増す。
洲崎圭子
(文学研究者/『《産まない女》に夜明けは来ない』著者)
中南米特有のマジックリアリズムへようこそ!
13歳の少女ヤナワラが祖父に殺され、審問が行われる。そこで祖父から語られるヤナワラは、「呪われた」存在だ。しかし、呪いをかけたのは、そして呪いを解くためにと、彼女を痛めつけたのは誰/何だったのか?無表情な彼女が笑みを浮かべ、声を失った彼女が声を絞り出した時、世間体とミソジニーに殺されていくこの社会の少女たちを想った。
坂上 香
(ドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』監督)
小さいころ読んだ童話と同じ
自分の知らない世界を生きる人々の不条理は、受け入れる以外どうすればいいんだろう
それでもなお、女たちはなぜ声を奪われるのか
そして、男たちはなぜ女を自分のものだと思い込むのか
そんなことばかりが不思議と“普遍的”であることに驚いてしまう
ラストで共同体議会が下した決定は自分にも理解できたが
わかる=正しいと言えるのかどうか。いまだに考えあぐねている
長島有里枝
(写真家)
ホセ・マリア・アルゲダスの小説世界のさらに深部に踏み込んだようなペルー山岳部の社会は、都市に負けず劣らず問題含みで少女を追いつめる。悲惨な物語だが、ときおり差し挟まれるロングショットの映像の美しさ、アンデスの雄大さに、私たちは一種のカタルシスを得る。モノクロの映像は闇の深さを際立たせ、浮かび上がるヤナワラの表情の光が印象に残る。アンデスの星を見た少女は自身、星になった少女でもあるのだろう。
柳原孝敦
(ラテンアメリカ文化研究)
監督:ティト・カタコラ(『アルパカと生きる喜び』)、オスカル・カタコラ(『アンデス、ふたりぼっち』)
脚本:オスカル・カタコラ 撮影:フリオ・ゴンザレス、 ティト・カタコラ、オスカル・カタコラ
編集:ティト・カタコラ プロデューサー:ティト・カタコラ
出演:ルス・ディアナ・ママニ、セシリオ・キスぺ
ペルー|2023年|アイマラ語|104分|モノクロ|4:3|原題:Yana-Wara
字幕翻訳:矢島千恵子 アイマラ語監修:マリオ・ホセ・アタパウカル
©2023 CINE AYMARA STUDIOS
後援:在日ペルー大使館 、日本ペルー協会
配給:ブエナワイカ


